みなさん、こんにちは。
今回は授記品(じゅきほん)です。
英語でBestowal of Prophecyといいます。
Bestowalは「何かを授与する」という意味で、Prophecyは「予言」的なものを現します。直訳しますと、予言を授与するといった感じでしょうか。
釈尊は4人の弟子達に対し、未来は一人一人このようになりますよと伝えているのが今回の授記品です。
この授記品の内容はシンプルですが、個人的にはここで授記品があるのは、ものすごく意義があると思っています。
それはなぜかは後で述べるとして、なぜ釈尊は、4人の直弟子たちにこのように告げたのでしょうか。
さっそく、4人のストーリーをそれぞれのバージョンとして見ていきましょう。
簡単あらすじ
摩訶迦葉 (まかかしょう/Mahakashyapa)バージョン
「私の弟子、摩訶迦葉は、未来の世において、三千万億の仏たちや世尊に出会い、供養し、敬い、讃嘆し、仏の無数の大法を広め宣していくでしょう。
“This disciple of mine, Mahakashyapa, in future existences will be able to enter the presence of three hundred ten thousand million buddhas, world-honored ones, to offer alms, pay reverence, honor and praise them, widely proclaiming the innumerable great doctrines of the buddhas.
そして最終的には光明如来(こうみょうにょらい)となるでしょう。
And in his final incarnation he will be able to become a buddha named Light Bright Thus Come One,
国を光徳(こうとく)といい、劫(時代)を大荘厳(だいしょうごん)とよばれるでしょう。
His land will be called Light Virtue and his kalpa will be called Great Adornment.
※この後、摩訶迦葉の未来の姿、国の様子などの説明が入ります。
摩訶迦葉がこのように釈尊から言われているのを、他の3人の弟子達も聞いて、自分たちにも予言を授けてくれるように、釈尊にお願いします。
釈尊はそれに応えまして、残りの3人にも同様にこのように伝えます。
須菩提 (しゅぼだいSubhūti)バージョン
この須菩提は、まさに未来の世において、三千万億の仏に出会い、供養し、恭敬い、尊重し、讃嘆し、仏の説く修行の方法を常に実践し、菩薩道をやり遂げ、最終的に仏となるでしょう。
Subhuti here in future existences will enter the presence of three hundred ten thousand million nayutas of buddhas, offering alms, paying reverence, honoring and praising them. He will constantly carry out brahma practices and fulfill the bodhisattva way, and in his final incarnation he will be able to attain buddhahood.
彼は名相如来(みょうそうにょらい)となるでしょう。
His title will be Rare Form Thus Come One,
劫を有宝(うほう)といい、国を宝生(ほうしょう)というであろう。
His kalpa will be named Possessed of Jewels and his realm will be named Jewel Born.
※この後、須菩提の未来の姿、国の様子などの説明が入ります。
摩訶迦旃延 (まかかせんねん/Mahākātyāyana)バージョン
この迦旃延は、未来の世において、さまざまなものを奉納して八千万億の仏に供養し、仕え、恭敬し、尊重するでしょう。
Great Katyayana here in future existences will present various articles as offerings and will serve eight thousand million buddhas, paying honor and reverence to them.
諸仏が入滅した後は、それぞれに塔廟を建て、高さは千由旬(ゆじゅん))、幅と奥行は等しく五百由旬であろう。
After these buddhas have passed into extinction, he will raise a memorial tower for each one measuring a thousand yojanas in height and exactly five hundred yojanas in both width and depth.
※1由旬を約7kmと解釈すると、高さ7000km、縦横3500kmとなります。高さは地球の半分ぐらい、縦横は月の直径ぐらいあります。。でかい。
金.銀・ラピスラズリ・貝殻・瑪瑙・真珠・カーネリアンの七宝で造られ、多くの花、首飾り、塗香(ずこう/ペーストの香)、抹香(まっこう/粉にした香)、焼香、絹の天蓋や、幢幡(どうばん/仏堂に飾る旗)を塔廟に供養するでしょう。その後、また二千万億の仏の供養も同じようにするでしょう。
It will be made of gold, silver, lapis lazuli, seashell, agate, pearl, and carnelian, with these seven precious substances joined together. Numerous flowers, necklaces, paste incense, powdered incense, incense for burning, silken canopies, streamers, and banners will be presented as offerings to the memorial towers. And after this has been done, he will once more make offerings to twenty thousands of millions of buddhas, and will repeat the entire process.
この諸仏をすべて供養し終った時に菩薩道を成就し、閻浮那提金光如来(えんぶなだいこんこうにょらい)という仏となるでしょう。
When he has finished offering alms to all the buddhas, he will fulfill the way of the bodhisattva and will become a buddha with the title Jambunada Gold Light Thus Come One,
※この後、摩訶迦旃延の未来の姿、国の様子などの説明が入ります。
摩訶目犍連(まかもっけんれん/Mahāmaudgalyāyana)バージョン
この大目犍連は、さまざまな奉納で八千の諸仏を供養し、恭しく敬って尊重するでしょう。
Great Maudgalyayana here will present various kinds of articles as offerings to eight thousand buddhas, paying honor and reverence to them.
諸仏が入滅した後は、それぞれに塔廟を建て、高さは千由旬(ゆじゅん))、縦横が等しく五百由旬であろう。
After these buddhas have passed into extinction, for each of them he will raise a memorial tower measuring a thousand yojanas in height and exactly five hundred yojanas in width and depth.
金.銀・ラピスラズリ・貝殻・瑪瑙・真珠・カーネリアンの七宝で造られ、多くの花、首飾り、塗香、抹香、焼香、絹の天蓋や、幢幡(どうばん/仏堂に飾る旗)を供養するでしょう。その後、また二百億万億の仏の供養も同じようにするでしょう。
It will be made of gold, silver, lapis lazuli, seashell, agate, pearl, and carnelian, with these seven precious substances joined together. Numerous flowers, necklaces, paste incense, powdered incense, incense for burning, silken canopies, streamers, and banners will be presented as offerings. After this has been done, he will also make offerings to two hundred ten thousand million buddhas, repeating the process.
そして、多摩羅跋栴檀香如来(たまらばっせんだんこうにょらい)という仏となるでしょう。
Then he will be able to become a buddha with the title Tamala Leaf Sandalwood Fragrance Thus Come One
その劫を喜満(きまん)といい、彼の国を意楽(いらく)というでしょう。
His kalpa will be named Joy Replete and his realm Mind Delight.
※この後、目連の未来の姿、国の様子などの説明が入ります。
最後に、釈尊はこのように伝えます。
私のさまざまな弟子たちは、威厳と徳を十分に備えているのです。その数は五百人にものぼり、皆このような授記を得られるでしょう。未来の世では全て仏になることができるのです。
My various disciples, fully endowed with dignity and virtue, number five hundred, and every one will receive such a prophecy. In a future existence all will be able to attain buddhahood.
あなたたちと私の前世からの因縁を今説きましょう。
Concerning the relationship between you and me in past existences I will now preach.
よく聞くのですよ。
You must listen carefully.
ざっくりかんたん解説
舎利弗が如来になれると聞いて喜ぶ譬喩品(第3)から続いている話のまとめのような品です。
譬喩品(第3)で説いた釈尊の教えを信解品(第4)で見事に譬えかえした弟子。そのことを薬草喩品(第5)で褒めたたえ、今回、授記品(第6)で他の4人にも舎利弗同様、仏になることを約束します。
薬草喩品の話にありました、「雨」という「仏が降らす法」は同じ一つの味で、等しく降り注ぎますが、受け取る草木に違いがありました。
そして、今回。
釈尊はみんなが「仏」になれるよといっていますが、それぞれの弟子が仏になったときの名前はそれぞれ違いましたね。
・・・。
仏は同一人物にはならないのです。
説く法が同じなのです。
ざっくりと今言いいましたが、これって、とてつもなくすごいことだと思いませんか?
さすが、釈尊。そしてさすが法華経をつくった弟子達。
もう、さすがとしか言いようがありません。
「仏」とは、「他の誰かになること」でも、「自分という人格を消すこと」でもなくて、その人がその人の特徴を残したまま、そのまま仏になり、「それぞれの仏」が「唯一の法」を衆生に説く人となっていくんですよ。
授記品で言いたいことは一言でいうとこうなると思います。
このように捉えると、法華経は単なるファンタジーの物語ではなく、実にリアルで、本質をとらえたものだと感じることが出来ますね。
授記品おわり!次は化城喩品(けじょうゆほん)第七です。
〈法華経28品シリーズ〉
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